私は片付けをやめた2

よまいごと広場
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不穏な家

俺は妻と結婚して3年が経ち、幸せに暮らしていると思っていた。

しかし、妻が突然、食器を片付けないと言い出して

俺が食べるテーブルが食器でいっぱいになった。

ったく、食器を洗うなら片付けくらいやれよな。

仕事の日には片付けすら面倒くさいしたくないんだよ。

俺は、ゴミ捨てと休みの日の洗濯物干すのをやっているのに片付けしろとか

どれだけ手伝えばいいんだと俺は思う。

とにかく俺は食器の片づけなんて絶対やらない。

そしたら、妻も意地を張って俺の分だけ片付けないもんだから食器がくさくなっている。

早く片付けろと思う。

ただ、3日前から妻の体調が悪くなっている。

咳が出て熱っぽいと最近言っている。

ったく体調管理がなっていない。今日何て仕事を休んで家で寝ると言い出した。

まぁ、寝込むほど体調が悪くなっているなら少しは心配だな。

ご飯は俺が自分で用意するか。

俺はコンビニで弁当を買って、家路に着いた。

「ただいま」

暗い家の中を入る。

手を洗って、ダイニングテーブルで弁当を食おう。そう思い、俺はダイニングに行くと

人影が見えた。

近づいていくと、妻の後ろ姿が見えた。

何をやっているのだろう。体調が悪いせいかいつもよりフラフラしている。

俺は電気をつけた。

「ただいま。」俺は妻に声をかけた。

「何だよ、お前動けるじゃねぇかよ。じゃあ、弁当をチンしてくれ……。」

俺は妻の姿を見て、口が止まった。顔から足まで体のすべてが停止した。

妻の肌色が緑になっていて、腐敗した顔をしていた。まるで、映画に出てくるゾンビだ。

「あぁぁぁぁぁぁぁ……。」

うめき声をあげてゆっくりと俺に近寄ってくる。

持っていた弁当をテーブルに投げつけ、寝室に行った。いくつか片付けていない食器にあたり、傾く。

それを気にせず、妻は俺に近づいてくる。

寝室に鍵をかける。

とりあえず、鍵をかけられる寝室に逃げ込んだが、ここからどうするか。

逃げるかやっつけるか……。

もし逃げたとして、妻が外に出てしまえば誰かに咬みつき、ゾンビが蔓延する世界になってしまう。

かといってやっつけるのも妻を攻撃するのは抵抗がある。最近、仲悪い状態だったが、これでも俺の妻である。

しかし、ここは断腸の思いで頭を凶器で殴るしかないのかもしれない。

映画ではそうしなければヒーローになれないのだ。

でも、ゾンビと対峙したことないから怖い……。

そう考えていると、寝室の扉をドンドンと叩く音と振動がした。

ゾンビはそこまできている……。

「あぁぁぁぁぁ……。」

うめき声が扉の向こうから聞こえる。

俺は倒すために必要な凶器になりそうなものを探す。しかし、寝室にはそんなもの常備しているとは思えない。

それでも、探さなければいけない。

そうしていると、扉の向こうから

「お前のせいだ。」

とゾンビの濁った声が聞こえてきた。

「お前のせいだ。」

は? 俺のせいだと?

俺の何がいけないというのか。ふざけるな。

俺はとにかく妻の格好をした屍を始末しなければならんのだ。

俺は、ベットの横のテーブルに花瓶が置いてあるのを見た。

これで殴ればいける!

そう思い、俺は花瓶から花を抜き、花瓶の中に入っていた水を窓の外に捨てた。

それと同時に、今まで鳴っていた扉を叩く音が止んで、向こうからか弱い声が聞こえた。

「あなた、私はまだ生きているわ。でも、もうすぐ理性を失いそう。」

まだ妻は理性を失っていないのか……。

もし、研究所に連れていって薬を投与すればまだ救えるかもしれない。

俺はそれに賭けてみようと思った。そして、扉をゆっくりと開けて、恐る恐る寝室を出た。

大丈夫だ。俺は凶器として花瓶を持っている。

そして、妻ゾンビを探す。

1階に降りると、リビングの入り口で背中が見えた。

ここは慎重に近づく

すると、後ろ姿の妻ゾンビが妻の声で言った。

「あなたのせいよ。あなたが皿を片付けないから。変色して異臭のする皿を洗わなかったから。ゾンビウイルスが……。」

俺はその言葉に足が止まる。

あの腐敗した皿にゾンビウイルスがついていたとでも言いたいのか。

まさか、そんなこと……。

考えていたら、突然、足音がこちらに近づいてきた。妻ゾンビがこちらに気づいたのだ。

しかも、もうすぐ手が届きそうなくらいに!

俺はいざ対面してみると、怖くて動けなかった。

そして、妻ゾンビは俺の肩を掴んだ。

「お前のせいだ! お前もゾンビにしてやる!」

とゾンビの声で俺に言った。

俺は花瓶で妻ゾンビの頭を思いっきり殴った。すると、花瓶は粉々に割れた。

妻ゾンビは下を向いたが、すぐに俺の方を向いた。どうやら、花瓶では効果がなかったようだ。

俺には武器がなかった。

終わった……。俺は妻に噛みつかれ殺されてしまうのか……。

俺は怯えていた。

妻ゾンビは俺を噛みつこうとし、俺は叫んだ。

「あーーーーーー!!」

気づいたら、ベッドの中だった。

横に妻が寝ていた。もしかして……、夢なのか……。

俺は一旦、水を飲もうと思い、下のキッチンの方に行った。

相変わらず、ダイニングテーブルには俺の側だけ食器が勢揃いである。

しかも、臭い。

俺は、避けようとしたが、食器の前を通り過ぎようとしたときに、

妻のゾンビ姿が脳裏に浮かんだ。俺は一瞬止まる。

もし、これが正夢になってしまったら……。

俺は恐ろしくなった。まずい、この食器どもを洗わないと……。

私は片付けをしない

私は、いつもの時間に起きた。横には夫がいなかった。

どこに行ったんだろう……。そう思い、下に行くとソファーで寝ていた。

ふと、ダイニングテーブルの方に目をやると、夫の方に集まっていた洗っていない食器たちがなくなっていた。

その奥にあるキッチンを見てみると、水切りカゴに大量の食器があった。

私はソファーの夫を起こした。

「おはよう。」

声をかけると、夫は私を見て驚き、

「お、おはよう。」

と言い、起き上がり顔を洗いにいった。何か様子が変だ。

それでも、私は夫のためにトーストを焼いた。

夫はダイニングテーブルに座り、トーストを食べた。

私は夫に

「ねぇ、皿洗ってくれたの?」と聞いた。

すると、夫は

「あ、ああ。洗ったよ。お前がゾンビになったら困るからな。」と言った。

は?

その後、夫はトーストを食べ終わり、着替えて仕事へ行った。

何だかよくわからんが、夫を片付ける必要はなさそうでなによりだ。

この作品はフィクションです。
この作品に登場する人物は架空であり、実際の人・団体とは一切関係ありません。
この作品では食器を洗わないとゾンビになるという内容ではありますが、そういった報告は聞いたことがないのでご安心ください。しかし、食器を洗わずに放置する行為は決してマネしないでください。

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