当選したタイムマシン3

創作ストーリー
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前回のあらすじ

スーパーのくじ引きで見事1等のタイムマシンを当てた田中春樹

タイムマシンを使い、過去の自分の仕事でのミスをやり直した。

その後、現在に戻り何事もなく過ごすことができた春樹。

そして、春樹はこれを繰り返していけば完璧な自分でいられることができると思い、何度もタイムワープしようと決める。

繰り返しタイムワープした春樹

僕は、いつに何のミスをしたかを思い出しミスした日の夜に行ってこっそりと修正した。

ワープしているときは誰かに見つからないように細心の注意を払っていたが、

だんだんと慣れてきたのか、流れ作業のように何度もミスを訂正した。

それに慣れるとか今までどれだけやらかしてきたんだと思う。皮肉なことに……。

何回か警備員さんに見つかったことはあったけど、何とか逃げては戻ってきた。

同僚の加藤から

「最近、お前ミス減ってないか?」

と言われるようになった。

「え、そうかな……。」

僕は心の中で喜びながら、知らないふりをした。

上司にも褒められたし、留美ちゃんにも

「田中さんって仕事できるので頼れます。」

なんてことを言われた。

そんなこと言われたら好きになってしまう……。

落ち込む留美ちゃん

ある日、留美ちゃんが何となく落ち込んでいるように見えた。

いつもなら声をかけないが、仕事できていると思われ、自信がついたからか

「どうしたの?」

と声をかけてみた。すると、留美ちゃんは

「あ、田中さん。こんなこと田中さんに言うのもあれなんですが、付き合ってた彼氏に酷いこと言われてフラれてしまって……。今、立ち直れなくて……。」

「そうなんだ……。」

彼氏がいたのか……。

でも、フラれてしまったということは話を聞いてあげた方がいいかもしれない。

「僕で良ければ、話聞くよ。」

「いいんですか? ありがとうございます。」

こうして、留美ちゃんの話を聞くのをきっかけにだんだんと仲良くなっていった。

そのときも、ちょこちょこミスをしていたのでタイムワープして訂正も忘れずにした。

1か月後

仕事を完璧に上司からいい評価を貰えて、留美ちゃんとも仲良くなった僕は

ついに、留美ちゃんに告白しようと決めた。

仕事終わりに、僕は留美ちゃんに会う約束をして、食事することにした。

告白するために高級レストランを予約した。

こんなところで食事するなんて初めてだったのですごく緊張する。

留美ちゃんもどことなく緊張している。

「すごくおいしいね。でも、いつもより高級なところだから緊張しちゃう。」

「そうだよね。でも、おいしいって言ってくれて良かった。」

食事が全て終わり、僕はついに留美ちゃんに言った。

「あのさ、留美ちゃん。今日は伝えたいことがあってさ……。」

僕は、姿勢を整え、意を決して言った。

「あなたのことが好きです。付き合ってください!」

留美ちゃんは少し困惑している。数秒間、沈黙になる

鼓動が体中に響くほど、強くなっている。

体の内側が熱くなっている。どうしよう、落ち着かない。

今、心の中は燃え滾っている。早く、消火してほしい。

沈黙の後、留美ちゃんは口を開いた。

「すごく嬉しい。今まで話聞いてくれたし、田中さんは仕事ができて、本当に尊敬する。」

これはOKということなのか? そう考えていると、

「でも、仕事が完璧な田中さんには私は必要ないと思う。」

「え?」

「田中さんって初めて会ったときはあまり仕事ができない人だったじゃない? でも、私は田中さんの誰にでも優しいところや、頑張り屋さんなところはとても好きで、そんな田中さんを愛しく思えた。

私が仕事のできない田中さんを支えたいと思った。そのときは付き合っていた彼氏がいたからなかなかそのことは言えなかったんだけど、私がフラれて声をかけてくれたのとても嬉しかった。

でも、今の完璧な田中さんは支える人がいなくても十分。私なんていらないと思う。なので、ごめんなさい。」

「……。」

僕は何も言えなかった。僕らはレストランを出て解散した……。

完璧な僕に私なんて必要ない……。

僕は留美ちゃんに言われたことを思いかえす。

何だよ、完璧になれば好きになってくれると思ったのに……。

完璧にするためにタイムワープしてはミスを修正したのに……。

留美ちゃんを好きにさせるためにやってきたのに……。

全部、無駄じゃないか。

このままの仕事ができない優しい男でいれば好きになってくれたじゃないか。

この日はそんなことを思いながら、寝た。

翌日、留美ちゃんのことで落ち込みつつも、出社した。

そして、課長から会議室に呼ばれた。

「お前に辞令が出た。」

「辞令ですか?」

「お前は、ここ最近、完璧に仕事している。それが評価されて海外への異動が決まった。ロンドン支社に異動だ。

「え!? ロンドンですか?」

僕は啞然とした。ロンドン支社に異動?

「この会社では『可愛い子には旅をさせよ』ということで皆、各所に転勤して、経験を積んで幹部になるらしい。お前はその切符を掴んだ。良かったな。」

そんな急に言われても……。

「課長、考える時間をもらってもいいですか?」

「もちろんだ、急に海外なんて言われても心の準備がいるからな。考えなさい。」

課長は会議室から出た。僕は、会議室で一人残された。

正直、僕はそんなに出世欲はない。

それに海外に異動になったら、留美ちゃんに会えなくなってしまう。

せっかく、仲良くなれたのに……。

こんなふうになるなんて思わなかった。

僕はただ、仕事ができるように思われて、皆から褒められて留美ちゃんに好きになってくれれば良かったのに……。

思い描いたのと全然違う……。

結局、タイムマシンなんていらないじゃないか……。

後悔と強い怒りが同時に襲い、正直、何もしたくなかった。

こんなことになるなら全部戻してしまおうか……。

その日、家に帰ると僕はタイムマシンのスイッチを入れた。

ある天気の良い日

「田中、またここ間違えてるぞ!」

「すみません! 修正します。」

僕は田中春樹。入社3年目のサラリーマンである。

注意不足が多く、よくミスをしてしまう。

僕は、タイムワープして全て元に戻した。結局、僕にはタイムマシンはいらなかったんだ。

よくミスして怒られるけど、悪いことばかりじゃない。

「田中さん、課長、私、今手空いてるんで修正してもいいですか?」

「そうか、じゃあ、佐々木に振るわ。」

「ありがとう。」

「いえ、いいんです。また何かあったら、できるだけフォローしますから。」

留美ちゃんがフォローしてくれる。

それに課長からも、

「お前は、ミスは多いが、皆に分け隔てなく優しいし、最後まで仕事をやりきるから助かる。」

なんて言われることもあった。

僕は今、恵まれているな

って思うのだった。

この作品はフィクションです。
作中の人物は架空であり、実際の人物・団体とは一切関係ありません。

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